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3単現ほどむずかしいものはない

2010.02.22.11:12

英語の、「3単現のs」について考えてみるのですが、



これって中一のかなり最初の方に出てきて、基礎項目とされていますね。



ところがどっこい、第二言語習得研究は、この文法項目はもっとも習得しがたいものの一つ、とされています。現に、私でさえ、主語の部分がすごく長くなると、動詞にsをつけることを忘れてしまう、なんてことはたくさんあります。多くの人がそうでしょう。



なぜか? というのは逆に、ネイティブはなぜこれを絶対にまちがえないのか、ということですが、たぶん、脳の回路のどこかで、潜在意識レベルにおいて、「いま話していることの主語は何人称で、単数か複数か」というのをチェックしているところが存在するのではないかと思います。ドイツ語やフランス語など動詞の人称変化がある言語を話している人は、この回路がすでにあるはずなので、習得が容易ではないのだろうか、ということですが、これは「人称変化のある母語話者とそれ以外で3単現sの習得に差異があるか」という研究をすれば証明できます。研究者のみなさん、いいテーマでしょ? 誰か研究してくれませんかね~ 



少なくとも日本語には動詞を人称で変化させるという発想が皆無なので、それを習得することに多大の困難があることは予想されるのです。それから、単数と複数を明確化するという言語習慣もないですね。どうも、日本語と英語はあまりに違いすぎます。英語は日本人にとってかなりむずかしい言語だということを理解しておく必要があります。はっきりいってアラビア語と大差ないくらいのむずかしさだと思ってます(て、アラビア語はあまり知らないですが)。



たとえば

私はテニスをする → 私はテニスをした

I play tennis → I played tennis.



日本語では過去形で「する」から「した」に変化させますので、過去の時に動詞を過去形にするという発想は理解しやすいです(正確に言うなら、過去の助動詞「た」を使うということですが)。ところが、「私はテニスをする」「彼はテニスをする」――べつに、「する」の部分は何の変化もしませんね。ですから日本語話者は、主語が「私」であるか「彼」であるかということを頭のどこかでチェックしておいて動詞を言うときにそのデータを参照する、という脳の使い方ができない、ということなのです。これは脳科学的な問題かもしれませんね。「人称によって動詞を変化させる」というコンセプトそのものがきわめてむずかしいのです。これが英語を始めて三ヶ月の人に完全にできるわけがない、という理屈なのです。



ま、ここでいいたいことは、「3単現を正確にできるようになれ」と中一生に要求するのは非合理的である、ということなんです。

そういうことでポイントを稼げる生徒は、むしろ理数系的に、与えられたルールをいかに適用できるか、という能力が高いわけです。それはそれで悪いことではないのですが、それがイコール外国語の実力ではないのです。できることはいいのですが、できないからといって駄目ということでもないのです。



それよりも大事なのは「語順」です。英語史を見ればわかりますが、人称変化の大部分を失ったために語順の重要性が増しているのです。



先に挙げたカエルシリーズは、語順を基本として教えているのがよいところです。



第二言語習得理論で出てくる概念で「中間言語」というのがあります。



これは簡単にいうと、自分なりの文法ルールを作って話そうとする段階が必ずある、ということです。たとえば、



I am not happy.

I play not tennis.



なんて、play not は am not の過剰な一般化なのですが、こういう段階を必ず通らなければ正しいルールの習得に至らない、というのです。つまり、「矯正しても無駄」ということです。これは教師にとっては衝撃的な事実ですね。それで行くと、今までの中学高校の英語の教え方は根本的に再考しなければいけないし、それを前提としている高校入試とかもそれでいいのかという話になってしまいます。「文法的誤りを矯正することは必ずしも習得につながるとは限らない」というのは教師の常識に反していますが、中間言語の段階を認めてそれが正しいルールへと展開するのを待つ、という姿勢がむしろ自然な習得順序にかなっているのです。



余談ですが、英語の歴史のある段階では、I play not tennis 型で否定文を作る時期が存在していました。


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プロフィール

SH

Author:SH
東京大学大学院総合文化研究科出身。現在、地方の公立大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみました。フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。現在は中国語とロシア語を学習中で、自分の外国語学習理論による多言語習得をめざしています。ハングル能力検定3級合格。

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