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英語音声面の学習書を考える

2010.03.06.23:32

音声面の教材についてあらためて考えてみました。



先に書いたように、1.個々の音素をしっかりマスターする、というのと、2.音のつながり、弱形、リズムの変化、など、という二つの要素があります。



外国語といえばどれも、音声システムが違うのですから、それをしっかりマスターすることが大きな部分を占めることはいうまでもありません。日本の外国語教育で音声面が重視されてこなかったのは、「漢文書き下し」の伝統があるからだといっていた人がいましたが、その通りだと思います。音はどうでもよくてとりあえず書いてあるものが読めればいいという、江戸時代までの中国文化摂取の方式が、英語に応用されてきたというわけです。



中国語でも、戦後になって音声重視の教育方針に変わり、英語でもセンター試験にリスニングが導入され、その外国語教育の文化を転換しようという、そういう時期に今はあたっているわけです。



で、英語の音声システムは、残念ながら、日本人にはかなりむずかしい部類に属します。よくいわれるのは、イタリア語、スペイン語、インドネシア語などはやさしいということです。日本語の音声システムは比較的単純なのです。世界の言語をみな音声システムが複雑な方から単純な方へ並べるとして(そういうことができるとしてですが)、日本語は、いちばん単純な方に近いわけです。ですからそれだけでも、日本人は外国語学習にハンディを持つことになります。そして英語は、複雑であると同時に、他にはあまりない独特の「クセ」を持っています。そういうややこしい言語が世界標準語になってるのは困るという意見は当然ありますが、そもそも何が世界で広まっているかというのはその言語が優れているというよりは政治的な力によるものですから、それを言ってもしかたありません。ついでにいえば、日本政府は世界で日本語教育を普及するのにもっとお金を使うべきです。それが国益であるという認識をもつべきです(その点、フランスや中国はすごいですね)。



前置きが長くてすみませんが、音声面の学習書には、



1. 個々の音素のトレーニング

2. 音変化、リズムなど



の二つの要素があり、1.をだいたいマスターしてから2.へ進むのがふつうでしょう。



1.の学習書としては、鷲見由理『DVD&CDでマスター英語の発音が正しくなる本』巽一朗『英語の発音がよくなる本』などあります。しかしこれだけでは音声面の学習としては道の半分にすぎません。



2.の学習書で比較的簡単なのは 藤田英時『知ってる英語なのになぜ聞き取れない?』ですかね。あと、深澤俊昭『英語の発音パーフェクト学習事典』もほとんどがこの2の分野でした。少し高度になってきますが、森田勝之『映画英語のリスニング』そして前項であげた西蔭浩子『英語リスニングのお医者さん改訂新版』などがあります。これらは1.を先にやってないと意味がありません。



音声面の教育を一冊でやろうという本は、1.2.の項目をアレンジしてまとめようとしています。



関正生『世界一わかりやすい英語の発音の授業』

野中泉『英語舌のつくり方』

靜哲人『絶対発音力』

小川直樹『イギリス英語でしゃべりたい!』




これはいずれも1.2.の両方の要素を入れようとしています。分量的に限られているので、たとえば音素の方は「日本人に苦手な音」に限るとか、ちょっと高度なことはパスするとか、そういう工夫をしているのがわかります。靜さんと小川さんのは、音変化の解説が音素の解説ほど詳しくありません。



私は先に、『絶対発音力』を一押しと評価しましたが、2の部分は少し説明が簡単で、指導者がないとむずかしいかな、と感じる部分もありました。2の部分については別の、それ専門の本をもう一冊やっておくのがおすすめです。1についても、全部の音素をカバーしていませんので、そういう本をあと一冊おさえておく、という体勢ですね。



それと前にも紹介しましたが、音声学の基礎知識と共に、日本語話者の得意・不得意についてよく理解できる、神山孝夫『脱・日本語なまり』は強力おすすめです。ここから入って音声学に興味を持ったら、英語音声学の入門書にあたるのも悪くないでしょう。人を教える人はそこまでやっておくとよいです。



1.2.の学習を一通り終えたら、あとはCDつきのテキストとかDVD英語字幕などで、ひたすら多聴と、それから精選したテキストについてシャドーイング・音読、というメニューが考えられます。



デイビット・セイン氏が英語でしゃべらナイトのシリーズで音読本を出していますが、「5回音読、それまではCDを聞かないように」とその使用法に書いています。これには賛成できません。実際、1の要素もしっかりできてない人がきわめて多いのです。そういうあやしい発音しかできない状態のまま音読することにはむしろ危険もある、と言っている人が多いですが、その通りだと思います。その音読本もレベルが合えば悪くありませんが、その使い方ではなく、CDをまず聞き、それの通りにリピーティングし、シャドーイングし、それから自分での音読に行く、という、國弘さんの『英会話ぜったい音読』に推奨されているやり方の方がいいと思います。
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プロフィール

SH

Author:SH
東京大学大学院総合文化研究科出身。現在、地方の公立大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみました。フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。現在は中国語とロシア語を学習中で、自分の外国語学習理論による多言語習得をめざしています。ハングル能力検定3級合格。

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