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英語教育雑感

2012.11.25.20:30

ごぶさたでした。新しいコメントがあったので、英語教育についてちょっと書くことにします。

私の考え方は、基本的に、英語教育について全国民に一律の目標設定をすること自体無理があるということです。

というのは、ある程度まで英語が使えるようになるためにはものすごく時間がかかるということです。仮に「いちおう仕事で使える」というレベルをTOEIC800くらいと想定すると、標準的な高卒レベル(英検凖2級~2級程度)から必要な学習時間はおよそ2000時間になります。

どんなに頑張っても授業だけでは絶対に足りません。
したがって、大学の英語専門コースでも、授業時外の時間にたくさん勉強させる体勢をとらないと目標は達成できません。そして卒業要件としてハードルを設けるしかないでしょう。
一方、英語専門以外の一般英語では、学校が学生の英語力を担保するという考え方をあっさり捨てて、1.対面でしかトレーニングできないことを授業で集中してやる、2.学生の自発的な英語学習をサポートする体制を作る、というポリシーにした方がいいと思います。

英語教員の英語力が高くないことが問題だというのはその通りです。
ただそれだけはなく、学校教育全体にある外国語教育観が、実際に即していない部分もあると思います。
つまり、語学上達には絶対的にインプット量が必要だという自覚が足りないのです。
外国語には「やっているうちに何となくわかってくる」という無意識的な習得過程も重要なので、教えたことをすぐにテストで答えさせるというフォーマットだけでは十分ではないのです。そこで、多読・多聴を授業時間外でやるようなしくみを作らないと上達が限られます。
このあたりは第二言語習得理論の話になるので、詳しくはその専門の本を見てください。
それと、音声面の指導が非常に弱いことが学校教育の弱点です。

そもそも私は、鈴木孝夫氏の言うように、英語を完全選択科目化してもいいと思っています。
あるいは、全員が勉強するものを旅行などで使えるサバイバル英語程度に限定して、TOEIC800くらいまでをめざすコースは限られた人だけでいいということです。
中途半端にできてもあまり役に立ちません。仕事で使うとなると、使えるか、使えないかしかないので、TOEIC500か600くらいできたところで、通訳なしでは通じないので、できないのと同じです。500や600は、あくまで、800以上にいくための過程なのです。言いかえれば、やる以上、そこまで行かないとムダになると思います。

英語を選択にすれば、教員の数も限られますし、優秀な人だけが教員になります。英語教員の需要が多いのでたいしたことなくても教員になれているわけです。たとえば中国語やフランス語だったら相当にできても教えることだけで生活はなかなかできません。

このまえアメリカに行ったときに、中学生の塾で教えているという人が一緒にいたのですが、トイレに行きたくなったときに、日本語で「トイレ!」と叫んでいました。驚いたことに、それでなぜか通じていました(^_^;
しかし、"Where is the bathroom?" という簡単な英語が言えないのでしょうか? たぶんその人はトイレを普通 bathroom と言う、という知識はなかったと思います。
それからレストランに行っても、eggplant とか spinach という単語がわかりません。
また「発音がよすぎて聞き取れない」と言っていましたが、私は心の中で「違います、それはあなたの勉強方法が間違っているのです」とつぶやきました。
中学校で教える英語ってほんとに使えないんだなと実感した経験でした(笑)
といいますか、英語教育の目標設定をどこにおくのか、という難しい問題があるかなと感じました。

私はフランス語やドイツ語、中国語はなんとか本を読むことはできますが、会話ではたぶん上と同じ状況だと思います。
フランス語会話などはまったく不要ですから(フランスに行きたくならない限り)、それはムダな勉強として「捨てる」のもありだと思います。
しかし英語の場合そこまで捨ててしまってはまずいかもしれません。
これは「サバイバル英語」であって決して「会話」というようなレベルではありません。定型的なものを覚えるだけです。

今のところ、全体としてはまだまだ、英語の本を読めるところへ持って行こうというのが英語教育の目標として全員に課されているように感じますが、現実的にそれは無理です。そこまでどれだけの学習時間が必要かということを考えるとそれを全国民の義務として捉えることは非現実的だと思います。そこまで行くのは少数の希望者だけにして、他の人はサバイバルレベルに限定する方が実際的かもしれません。

本がすらすら読めるというのはTOEIC900より高いレベルであるというのを知っておく必要があります。
900ではまだけっこう読むのに時間がかかると思います。そこを頑張ってたくさん読んでいってだんだんできるようになるのです。

ですから、そもそも、英語の授業だけで英語が「使える」ようになるはずがありません。使えるというのはいかに大変なことかを理解する必要があります(ただ、英語の教員が、「使えるようになるにはどうしたらいいか」ということを知らなかったり、教えられないという問題はあります)。また、「トイレはどこですか」も言えないのは困る、という問題については、それならばそもそもそういうレベルにフォーカスした勉強に集中するという選択もあるということです。高校レベルのリーダーなど捨てて、簡単な英語を大量にインプットするという学習をすればいいのです。
そのへんが、今の学校教育は「巨大なる中途半端」に陥っているではないかと思います。「中途半端はやめよう」というのがここでのメッセージです。本気でやるならもっと時間をかけねばダメです。
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ご返事ありがとうございます

2012.11.30.22:23

コメントありがとうございます。先生のご意見と私のとがかなり違うのは、私が日本の英語教育の中だけでなく、その外にもいた人間だからかもしれません。私のコメントで失礼がありましたらご容赦願います。そのつもりで書いてはおりませんので。

>私の考え方は、基本的に、英語教育について全国民に一律の目標設定をすること自体無理があるということです。

そうですね。色々なレベルの、そして色々な教育環境が存在します。十把一絡げの議論は無理があると思います。

>ある程度まで英語が使えるようになるためにはものすごく時間がかかるということです。

>どんなに頑張っても授業だけでは絶対に足りません。

この点で、先生はじめ多くの識者の方々はいきなり十把一絡げの論になってしまっておられると思います。「すごく時間がかかる」かどうかは、生徒のレベルや教育環境で、1から10程も異なると思います。本来は、学生のレベルや教育環境相応に学生の英語習得レベルを上げる、とならなければならないと思います。

また、リーディング中心の英語の学習方法であれば、リーディングスキルそのものが伸びません。スピーキングを中心とした音声言語の習得を前提としない言語教育はreadingではなく、いつまで経ってもdecoding(読解というか、漢文の訓読のような感じ)パターンを続ける他ないからです。なかなか機能しないでいるリーディング中心の今の英語教育パターンでもって、「英語習得には膨大な時間がかかる」と言ってしまうのは正しくないと思います。

ちなみに、レベルの高い進学校の学生の英語の総学習時間数を考えれば、実際にはFSIのスケールで上級に行ってもおかしくないと思われます。

韓国がなぜ右肩上がりで英語習得レベルを伸ばして来たのかと言いますと、オーラル習得を重視して来たからだと思います。オーラル言語は文字言語を下支えしています。ですので、それにフォーカスするとリーディングやライティングの習得レベルもより上がります。

Re: ご返事ありがとうございます

2012.12.01.01:17

こんにちは
時間が足りないというのは、英語習得には膨大なインプット時間が必要で、その2000時間を授業だけでカバーできないという物理的問題です。限られた時間をいかに有効に使うかという問題であろうと思います。
また私がリーディング指導という時は同時にその音声的インプット、音読というプロセスを含んだものです。私のブログ全体を読まれれば、私が音声指導をいかに重視しているかおわかりかと思います。音声として言語を学習する必要性は再三強調しているのですが、それはまず音声的インプットから入るのがよいと思います。
音声について書いている他の記事もぜひご参照いただければ幸いです。
プロフィール

SH

Author:SH
東京大学大学院総合文化研究科出身。現在、地方の公立大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみました。フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。現在は中国語とロシア語を学習中で、自分の外国語学習理論による多言語習得をめざしています。ハングル能力検定3級合格。

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