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発音学習書三種の比較

2012.03.23.14:06

発音の本ですが、もう一ついいものに、野中泉『英語舌のつくり方』があります。
英語耳とか英語喉は、学問的には「?」もあるような本ですが、この英語舌はかなりまっとうなもので、いいのではないかと思います。
リエゾン、リズムのことまで、英語の音声面についての必要知識がコンパクトにまとまっているという点では『絶対発音力』と遜色ありません。むしろよりコンパクトでわかりやすい面もあります。

「フラップt」がしっかりのっていること、またtnの鼻腔解放まで触れています。
また、r音色のある ɚ には触れていません。それと、ʌ の音を、ə の強形として説明しています。それでアに似た母音は三つだとするのです。
たしかにʌ ə の二つは長音位置が近いので、実用上は同じ音の強弱とみても差し支えないようです。ただ、そういう説明をすると、ʌ もある程度脱力して発音するという言い方になるでしょう。

靜『絶対発音力』、野中『英語舌』、黒川『英語発音の筋トレ』を比較してみました。


          靜  野中  黒川
early, errの母音  ə   ə   ɚ
ə と ʌ    別  同一視  別(注で同一視可能と説明)
 ɚの説明  ×   ×   ○
リズム・リエゾン  ○   ○   ×
弱形        ○   ○   ×
フラップt      △   ○   ×
鼻腔解放      ×   ○   ×
側面解放      ×   ×   ×
帯気音       ○   ○   △
ʃ ʒ ʧ ʤ 区別  △  ×  ○
スペリングの対応  ○   ×   ×
息の量       ×   ○   ×
喉の通り      ×   ×   ○

思いつくまま列挙してみましたが、本によって結構違うことがわかると思います。
特に『筋トレ』は、単音に特化しているだけでなく、 ɚを意図的に使って練習をしていますので、その特徴を理解しておくといいでしょう。
逆に、アメリカ発音の ɚ はむずかしいので省き、イギリス式で代用するという発想もそれなりに合理的ですね。発音学習書を選ぶときは特にこの音がどう扱われているか注目するといいです。

で、音声知識の全体を知る上で靜・野中は甲乙つけがたいと思いますが、靜本はとにかく練習が豊富、野中本はコンパクトさがあり説明がわかりやすいです。可能ならば両方買って、どちらかをメインにしてもう一方を参照するのがおすすめです。

なおここで、野中本へのちょっとしたツッコミをしておきます(靜本については前にずいぶんツッコミましたので)。
米英どちらに統一した方がいいと言いつつ、 ɚ のことが出てないのはおかしいのでは?
ウの長短で、短い方がやさしいと言っているが、日本人にはむしろ強く唇を突き出す長いウの方がむずかしいのでは?
ar, or の扱いが簡単すぎる。
あとやはりスペリングとの対応は簡単に触れてほしい。多くの学習者は、語末の silent e のことも習っていないことが多いので。


追記: 今回の教科書は、『英語舌』にしてみました。『絶対発音力』もいいけど、二年つづけてそれを使ってるので、ちょっと違うことをしてみたくなったのと、どうしても文章の量が多くて教室では使いにくいところがあると思ったのです。独習にはいいんですが。
『筋トレ』は、やはり、単音しか扱ってないので、その他のことについてべつに教材作らないといけなくなりますね。それと、上に述べた方針なので、father / farther を必ず区別しないといけなくなるわけですが、それはどっちでもいいじゃん!(オプショナルである)という立場もあると思うので、この本を使うとどうしても必ずこの区別ができないといけなくなるので、その点が制約されるように感じました。
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プロフィール

SH

Author:SH
東京大学大学院総合文化研究科出身。現在、地方の公立大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみました。フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。現在は中国語とロシア語を学習中で、自分の外国語学習理論による多言語習得をめざしています。ハングル能力検定3級合格。

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