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「英語道」をすすめない理由

2012.03.20.01:14

前に、「英語道」っていうのがありました。剣道とか茶道みたいに、英語を「道」にしようという発想です。

これは趣味の世界としてはいいかもしれませんが、私は基本的に英語は「道具」だと考えています。
つまり、「英語をやること」は手段であって目的ではない(大多数の人にとっては)ということです。

「真の英語力」と言われるのも、結局、「英語を使って自分のやりたいこと・必要なことができる」という英語力だと思います。それは人によって違うわけで、タクシー運転手の英語力、ホテルフロント係の英語、理系の研究者の英語、外交官の英語、同時通訳の英語・・一つとして同じ英語力ではないわけです。

逆に言えば、「自分に必要のないものは捨てる」ということも必要です。タクシー運転手が英語で論文を読める力をつける必要はないのです。理系の研究者は映画が字幕なしでわかるようになる必要はありません。

私も、フランス語・ドイツ語・中国語を読むことはできるのですが、会話は完全に捨てています。本さえ読めればいいからです。ただ、初級レベルのリスニングは勉強しました。外国語をやるのに完全に音声を無視するのはかえって効率が悪いこともあるからです。

つまり、初級段階まではいちおう四技能をやるけれども、ある程度まで来たら、自分の必要なスキルに特化する、ということが学習としてはいいのです。

「自分に必要なスキルだけを、いかに短時間に効率よく身につけるか、合理的な方法論で学習する」ということをお勧めしたいわけで、それは決して「道」ではないのです。

「道」をどうとらえるかですが、一般的には、「道とは究めるもの」という理解があります。その、到達不可能な高みへ向かって生涯努力し続ける、という生き方が「道」のイメージとしてありますね。

「道」は、その究極目標とされることが、ごく少数の者しか到達できず、もしそれに到達したり、近づいたりしたならば、それはきわめて大きな文化価値を持つことになる、というわけでしょう。宮本武蔵みたいな世界ですね。

これを英語にあてはめることができるでしょうか?

「英語道」の到達目標が、「教養のあるネイティブスピーカーの言語運用能力」だということにします。

それは、ごく少数の、限りなく努力を続けたものにのみ見ることのできる貴重な世界なのでしょうか?

・・とんでもないです。そういう教養あるネイティブスピーカーは、何百万人もいるんですよ。
その人たちは、それなりに学校教育をまじめに受けた人たちですが、そういうことは日本人もやっているわけですし、特別、選ばれた人にのみ可能な厳しい修行をくぐり抜けたわけではありません。

つまり、修行の目的とするほどの「高い文化価値」はそこにはないということです。

もちろん、そういう高度な言語能力があってのみ理解できる文学作品などを研究するとしたら、また話は別です。そういう「英文学道」はあり得るのです。「英語学道」もあるでしょう。しかしそれは「英語道」とは違います。

言語は手段です。「道」の対象にはなりません。

もう一つ、「英語道」をすすめない理由は、おうおうにして、「道」というと「努力すること自体に意義がある」という発想になりやすいことです。いわゆるスポ根漫画、少年ジャンプみたいな世界ですが、何かを目標として努力すること自体が人間性の発達を促すというわけです。

そのことは否定しません。しかし、問題は、努力に価値を置いていると、その目的を達成するための「方法論の合理性への問い」がしばしば無視されがちだということです。

できるだけ最短で、合理的にその目的を達しようとするためには、できるだけ「最小の努力で最大の効果を上げるにはどうしたらいいか」と問うことが必要です。

ところが、結果が出ない時に、その方法論の合理性を問うのでなしに、「努力が足りなかった」と考えて努力の量を増やすことで解決しようとする行動パターンがあります。

どうしても、学校の部活などのカルチャーで育っていますと、そういう発想になりがちなのです。

ですから、むしろ、「努力を惜しめ!」なのです。

たとえば、今まで10の努力を振り向けていたことが、5の力でできるようになる方法があるのなら、あとの5を別のことに振り向けられます。
これが生産性の向上ということです。

英語を「道」にしない、道具と考えたときに、最も効率的な方法は何かという、いわば「工学的・技術的発想」が生まれると思います。技術の進歩とは結局、今までよりも少ない力でより多くのことができる方法を発見する、ということですね。

「もっと頑張らねば」と、すぐに勉強量を増やす方向に向かう前に、一度、自分が達成したいものは何で、そのためには何を捨てて、何をやれば最も最短でできるのかという、方法論をよく考えるのがいいです。そういう学習法を調べてみる時間は投資としてよいリターンをもたらすと思います。

そのへんが、「第二言語習得研究」に基づいた学習法を知ることをおすすめする理由ですね。


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プロフィール

SH

Author:SH
東京大学大学院総合文化研究科出身。現在、地方の公立大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみました。フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。現在は中国語とロシア語を学習中で、自分の外国語学習理論による多言語習得をめざしています。ハングル能力検定3級合格。

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