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TOEICは「日韓の英語中級者のためのお手軽な試験」である

2012.03.07.14:12

TOEICについては賛否両論ありますね。今回はTOEICという試験について考えてみました。
世にはトーイッカーと言われるTOEICスコアを上げるのを趣味とする人がいる一方で、ああいうものは役に立たないという意見もあります。

それについては、私の考えとしては「TOEICはなかなかよい試験であるが、過大評価されている」ということです。

TOEICはどういう試験かというと「日本と韓国の英語中級者が英語学習の目安とするのに便利なお手軽な英語試験」であると思います。

まず、「日本と韓国の」というのは、知っている人は知っていることですが、TOEICはいわゆるグローバル・スタンダードではありません。受験者の八割くらいは日本人と韓国人です。これはそもそもTOEICという試験は日本人がETSに掛け合って作られた試験だそうで、最初から日本人向きにできています。韓国人にもあうのは基本的に日本人と韓国人は(なんだかんだいっても)いろいろな点で似ているからだと思います(韓国語をするとわかりますが)。
TOEICのスコアはあくまでも「国内向き」のもの。グローバル・スタンダードということなら、TOEFLかIELTSにしておくのが無難です(国連英検も世界的にはほとんど知られていないと思います)。

そして「英語中級者向き」であることもポイントです。つまり、中級の人が上級へ行くためのプロセスに適合しています。
逆に、上級レベルになるとTOEICの「測定限界」を超えます。990取得者といってもその英語力にはピンからキリまでありますが、その990以上のレンジは測定できないのです。
これはテストを作るときに最初から測定レンジを決めているのですから当然です。辞書でも最初にこれは何万語くらいのレベルにすると決めてから作りますね。5万語の初級向き辞典について「語彙が少ないのでいけない」という批判をするのはあたらないわけです。
たとえばTOEFLなどはもうちょっとだけ測定限界が上の方にあります。TOEIC990でだいたいTOEFL105~110くらいでしょうか。TOEFLはその上120点まであります。10点ですがこの10点は簡単には埋められません。

中級者向きというのは、TOEICの英文は基本的に、英語圏で一般に使われている書き言葉に比較すると「一段階やさしい」のです。語彙数も4000語くらいですが、英語の新聞などを読もうとすればその倍くらいの語彙が使われます。つまりTOEICの英語がいくら読めたからといって、ただちに Financial Times などがすらすら読めるわけではないですし、ストレスなくペーパーバックを読み切れるわけでもありません。英文のレベルが違うのです。
つまり英語における「知的生産の英語」はTOEICよりも一段階上になります。それはTOEFLなどで判定しているものですね。

しかしそういうやさしい英語を、かなりのスピードで理解する(もちろん日本語に訳さないで)という訓練をすることが、英語の中級者にはかなりいい学習になるのです。
それは日本人が経験する受験英語というものが、比較的時間をかけて英文の構造を解読するという「精読」に傾いているので、それに欠けている要素をTOEICが補ってくれるのです。この点で日本人に向いてるわけですね。
ですので、英検2級を取ったあたりから始めてTOEIC860か900くらいまではTOEICのスコアを一つの目安として学習するのは効果が高いやり方だと思います。受験英語の「返り読み」ではなくある程度早い直読直解の習慣ができるので英語の基礎体力ができます。

三番目に、「お手軽な試験」だというのは、ほかの試験と比べて時間が短く、受験料も安いということです。
ケンブリッジ英検は一日がかりですし、TOEFLもみっちり4時間です。受験料も高いです。
半日で受けられて、一年に何度でも受検できるTOEICは基本的にお手軽バージョンの英語試験として設計されているのです。
もしTOEICでスピーキングの試験も課そうということになれば、一日がかりで、受験料も15000円くらいになっても不思議はありません。
そのスタイルにしたらここまで普及したでしょうか?
スピーキングもライティングもなくすべてマークシートにしたのは「お手軽化」を意図したデザインなのです。ですから「スピーキングがない」という批判は意味がないですね。だったらスピーキングのある試験を受ければいいだけのことですから。

以上のような三つのポイントがあるように思います。

問題は、TOEICが普及するあまり、そういうTOEICの性質を理解しないままTOEIC万能みたいな考え方が広まってしまっていることにあります。
英語についてあまり知らない人は、TOEIC満点=ネイティブ並、だと思っています。TOEIC900点ならばネイティブの9割くらい、と単純に考えるかもしれません。
これはまったくそうではなく、990はせいぜい「上級の始まり」くらいなものです。ネイティブが受けても受検慣れしていないと満点は取れないのですから、その辺に来ると測定限界になるわけです。もともと中級向けにデザインされているのですから。
TOEICが普通よりも平易な英語であることも一般に知られていません。

テストというのは、誰がどういう目的で何をテストしているのというテストの性格を理解した上で利用するものです。

一方、TOEICに対するこういう「批判」がよくあります。

・「TOEICではスピーキングもないし、真の英語力は計れない。TOEICがよくても全然話せない人もいるではないか」
 こう考える人は、少し論理的に考えた方がいいです。
まず、スピーキングがないのは最初からデザインしていることで「お手軽化」とトレードオフです。
「真の英語力」というのは曖昧な概念です。はっきり言ってそんなものはこの世に実在しません。自分のやろうとすることが英語でできればそれはその人にとっての真の英語力です。「真の英語力」というものがどこかに実在して、それを計るためのテストが存在する、というのは幻想に過ぎません。テストというのはそういうものではないのです。

TOEICがよくても話せない人がいるというのは、事実としてあり得るかもしれません。
しかしTOEICは「話せるようになるための基礎力を持っているか」はある程度判定できると思います。なぜなら、平易な英語をかなりのスピードで処理するという脳の働きはTOEICに対応する勉強でかなり鍛えられるからです。話せないのは、実地のトレーニングが少ないからなので、TOEIC高得点の人はたとえばスカイプ英会話などで実地をこなせば、わりと早く話せるようになると思います。ですからTOEICの勉強は英語を話すために全くの無駄だという批判はあたっていません。ただ、会話のスキルにはいろいろな要素があり、それはTOEICで測定できない部分ですが、お手軽試験TOEICにそこまで求めることはできません。
私は、「やさしい英語を速く処理する力」を伸ばすためにTOEICを示標とするのは効果的だと思います。こういう学習が広まったのは日本の英語教育界にとってプラスでした。日本人の英語力を上げるのに一定の効果はあったと思います。

「TOEIC800,900でもこの程度か」という「批判」については、それはそういう程度なのであって、もっとできると思い込んでいる人がいるのはTOEICのせいではないでしょう。
900はだいたい「中級が終了した程度」だということが最初からわかっていればそういうものかと思うだけです。

だいたい900くらいまでがTOEICの測定しようとしている予想レンジだと思いますので、その程度まで行ったらTOEICを目安にするのはやめて、自分に必要な英語力に特化した勉強に切り替える方が得策だと思われます。これは中村澄子さんとか高橋基治さんなどいろいろなTOEIC講師も言っていますね。

と書くと、「ではお前はなぜ990点の本など書こうというのか?」という疑問も出るかと思いますが、それについては後日また書くことにします。990点というのは一種の「客引き」ですので、本当の狙いは、TOEICの測定レンジを超えた世界へ英語力をアップさせることを書くものです。900に行ったらTOEICの問題ではなくもう一段階上のリーディングに挑戦していき、気がついたら990は簡単に取れる実力になっている、ということです。

ところで、英語教員の採用でTOEIC730で一部試験を免除したりするところがありますが、TOEIC730というのは英語力としては高くないと言っていいです。靜先生も言っていますが、英語を教えてお金を取ろうというのなら900くらいは行っていないといけません。そうならないのは、単純に、英語の教師の需要数に対してそれだけの人材が確保できないからです。本来、900はスタート地点です。

というわけで、TOEICは、あらかじめその目的と限界を知った上で活用すれば、なかなかいい試験だと思います。問題が起こるのは、それをよく知らずに過大評価しすぎたり、その反動として馬鹿にしたりする非生産的な態度のためです。
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comment

Secret

TOEICの存在意義

2012.03.11.14:01

いつも拝見しています。

TOEICは「中上級者にとってお手軽な測定手段」であり、
「過大評価」したり「過小評価」したりせず、
その特性を把握して、英語学習に活用しましょう。
・・・という先生のご趣旨に同感です。

いずれも「TOEICをよく知らない状態で評価しようとする」
から、おかしくなるような気がします。

No title

2012.03.12.22:57

こんにちは。
トーイッカーの戸育ぬり絵さんに賛同していただけるとは嬉しいですね(^^)
TOEIC以外の試験ではなかなか趣味としては成り立たないと思います。TOEICにはゲーム性があるというのもポイントかもしれません。

No title

2012.03.14.10:09

はじめまして。ほっちーと申します。菅原さんのことは夏からAndyさんのブログで存じており、ブログも定期的に拝見させて頂いておりましたが、此度の記事は自分の胸中をそのまま具体化したようなものでしたのでコメントさせていただきます。

TOEIC990点はせいぜい上級のはじまり程度というのは、僕が満点をとった時にまさに感じたことでした。

大学に入学した当初はTOEICで900点なんてとれる人は、自分とは全然違う光景が見えているんだろうなーなんて思っていました。
しかし実際にそうなったとき感じたのは、自分の英語力に上達度どころか、己の未熟さと英語学習の果てしなさがより鮮明なかたちで見えるという現実でした。

それなのに大学で初めて会う人には殆ど必ず「TOEIC満点の」という枕詞と共に紹介され、実力と一般的な認識とのギャップを感じるばかりです。

990を超えた世界の本、楽しみにしております!
英語教員を目指している以上、卒業までになんとしても「990のキリ」から脱出したいと存じます。

Re: No title

2012.03.14.20:16

ほっちーさん、こんにちは。990点おめでとうございます。
そうなんです、世間一般ではTOEICの英語が普通よりやさしめになっていることが知られていないので、990点というとすごいものと思われてしまいます。しかし、商売上それは有利なことなので(笑) そう思わせておき、陰でひそかに勉強しましょう。
TOEICを卒業されたほっちーさんは、次にはボキャブラリーに取り組むといいと思います。自分の語彙力を8000~10000くらいに上げるという目標で、とりあえずはTOEFLのボキャブラリーなど参考にされるといいのではないでしょうか。
では、これからもご活躍を期待しております☆

スッキリしました

2012.03.14.21:08

初めまして。
実は韓流本注文の際にはこちらのサイトを参考にさせていただきました。
TOEICに関して私が思っている事がズバッと述べられているので本当に気分がスッキリしました。

TOEICの事を良く知らない人が過大評価したり批判したりするのですが、元々私の英検やTOEIC受験動機は、英検1級やTOEIC900点は上を目指す学習者にとって必要条件とはなり得ても十分条件にはなり得ない事を力説するためでした。ただ、自分ができもしないで(批判ではなく)批評するのは負け犬の遠吠えにしか聞こえないので達成してから語るつもりでした。

ところが、今ではまんまと敵(?)の罠にはまって、TOEIC戦士になってしまいました。
たかがTOEIC、されどTOEIC・・・私のような中級者にとって、本当に楽しめるテストです。
まだまだ卒業できそうにありません。
では、またおじゃまさせていただきます!

Re: スッキリしました

2012.03.14.23:26

ありがとうございます。
TOEIC挑戦ってとても楽しいものらしんですね。
今度書く本のコンセプトは「TOEIC990を取って、『990なんて大したことない』と言おう」というものです。でも、その過程を楽しめる人がいちばん強いのかもしれませんね。
ではまたよろしくお願いいたします♪

No title

2013.03.09.08:03

このテストを目当てに勉強してるのは確かに本末転倒だと思います。
内容は薄っぺらだし、現実にはまず使い道がないような文章ばかりです。自分の英語力を測るために受けるならともかく点数を取るためにやるのなら考えたほうがいいですね。大学受験と同じで試験が終わったらきれいさっぱり忘れるのが落ちですから。微分積分を大学2年まで覚えてるやつなんて皆無でしょう?

私が思うに本当に英語力を測るためのテストを想定してるならもっと問題形式に幅があってもいいんじゃないかと思います。画一的な選択問題では対策も立てやすい。だから対策関係の商売が大繁盛する。
そのあたりにすごく胡散臭いものを感じるのは私だけでしょうか?

漢字検定の二の舞にならないことを祈るのみです。

Re: No title

2013.03.10.22:11

TOEICは全般的には良いテストですが、対策によってかなりスコアに影響が出るのは欠点と言えるかもしれませんね。
過大評価しないで使うことが大事です。

承認待ちコメント

2015.06.26.04:05

このコメントは管理者の承認待ちです
プロフィール

SH

Author:SH
東京大学大学院総合文化研究科出身。現在、地方の公立大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみました。フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。現在は中国語とロシア語を学習中で、自分の外国語学習理論による多言語習得をめざしています。ハングル能力検定3級合格。

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