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来年TOEIC授業の教科書

2013.12.02.22:35

来年度から始まるTOEIC授業について、いろいろ検討してきましたが、ついに教科書を決定し、シラバス案ができました。
その中から、教科書をご紹介します。

ヒロ前田さんも言っていたとおり、「TOEIC対策の大学用教科書にはゴミが多い」のです。
もちろん、市販のTOEIC対策本にも、あんまり対策になっていない本は多いので、ヒット率は2割か3割ではないかと思われます(それでも多すぎる見積もりかも知れませんが)。
ところが大学教科書になるとさらにヒット率は異様に低くなり、1割以下と言っても過言ではないですね。
なぜかというと、「大学関係者は実際のTOEICを知らないし、あまり受けたことがないし、対策法の勉強もあまりしたことない」ということらしいのです。
大学の専任教員でTOEICのプロと呼べる人は、西嶋さん、神崎さん、高橋幸治さん、塚田さん・・など、数えるほどしかいません。
まあ、TOEICに詳しくなっても別に業績として評価されるわけではない、というしくみになっているからですね。神崎さんだってTOEIC関係の著作が認められて専任になってるわけでもないようです。大事なのは研究論文だというわけです。

大学教科書の中で、使える数少ない本の一つが、『書き込みドリル』シリーズの教科書版です。
最近注目されている『書き込みドリル』ですが、それから解答を省き、教科書仕様にリメイクしたものがあります。
今回はそれを使用する予定です。

前期はまず『全パート』版の、Mastery Drills for TOEIC Test All in One を使います。
これをやりつつ、副教材として『公式問題集 Vol.5』をとりあげます。

後期は、Mastery Drills for TOEIC Test Reading と、Grammar の2冊です。
さらに継続して公式問題集の5です。

これとともに、単語集を用いますが、これは、最近出たばかりの『やたらと出る英単語クイックマスター』を採用することにしました。
これは、例文一つに3つの単語が入っているというDUOみたいな作りです。さらにダウンロードできる音声がすごくて、4種類もあります。例文+日本語+解説つき、例文+日本語、例文、さらに単語のチャンツ、とあって、段階を追って耳からの学習ができますね。
またどうしても単語学習は単調になりがちですが、ここではテーマごとに例文がまとめてあって、多少とも、文脈から覚えるような形に近くしてあります。

実はこれは、Hummer さんの強力なおすすめにより、決定しました。
彼はこの本を、今までの初心者向けTOEIC単語集の中で最高峰、と断言しました。

なお、音声の基礎知識を補う必要があります。基本でありながら高校までちゃんと教えられていないことが多いからです。一回やっておけばあとで役に立つと思います。
これには、野中泉『脱カタカナ英語の処方箋』を用います。

そういうわけで、前後期とも4冊という、お金のかかるものとなってしまいましたが、ものごとを始めるには道具をそろえる必要があるのですから、こういうところでけちらないほうがいいのです。必要なものは買いましょう。

できれば電子辞書なんかも用意したいですね。
その場合、英英辞典も入っているといいでしょう。
欲を言えば、紙の辞書と電子辞書と両方です。紙の辞書は、基本語について「読む」ものとして使います。
英英辞典は、Longman, Oxford, Cobuild の学習用のならどれでもいいと思います。

さらにさらに・・できれば、大西さんの『一億人の英文法』や『英単語イメージブック』も読んでもらいたいし、田中さんのも・・などと言っているときりがないので、そこは「参考書リスト」に留めておきます。

TOEIC授業の教科書選定、シラバス作成に当たっては、Hummerさん(濵﨑潤之輔さん)のご協力をいただきました。
もちろんTOEICのプロの方ですので、報酬をお支払いします。
TOEIC授業をどうするか困っている方は、一度相談してみるといいと思います。
ご親切に、いろいろと特典をつけていただきました。


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「翻訳者養成型」英語教育からの脱出

2013.12.01.13:18

多くの日本人は、ゼロから英語学習を始めるわけではありません。
すでに学校での英語教育をたくさん受けているわけです。
ですからそこでのメリットとデメリットを勘定に入れて学習方法を考えないといけません。
英米の英語教授法の学者がいう理想の方法をそのまま日本に持ってこようとしてもどうしようもないのです。
インタラクションの中で学んでいくのがベスト、というのは正論かもしれませんが、週3,4回で1クラスが40人、教室の外に出れば英語を使う機会はどこにもない、という環境で、それをやってどうするというのか、という問題があります。その国の英語教育法はあくまでその国の人がテイラーメードで考えるべきものです。

一般の人は英語教育の現状に漠然とした不満を抱いていますが、どこをどうしたらいいのか、ということはよくわかっていません。
会話の授業が不足していると考えて、英会話スクールに通ったりします。
「聞き流せばよい」という教材もありますね。
こういうものは、既に文法や単語の知識は十分にあるが、音を聞いたり実際に会話をしたりした経験がないのでできない、という人にはある程度の効果はあると思います。
ただ、基本的に基礎ができていない人はどうにもなりません。

明治以来の英語教育は基本的に「翻訳者養成」の教育であったと思われます。欧米の知識を日本語に直していくことが文明開化、近代化に必須だったからです。それはそれ以前の漢文の伝統をふまえたものでした。
そこでは「読めればいい」わけで、聞くことや話すことは必要とされませんでした。
それを効率的に進めるための方法が「訳読」であって、これもまた漢文読み下しという伝統の延長線上にあります。

問題は、時代が変わってきたのに、いまだにこの「翻訳者養成型の教育法」が生き残っていることにあるのです。

もちろんその外国語の用途によっては、それでいいということもあるのです。私も、研究上、フランス語・ドイツ語・中国語の文献を読むことがたまにあります。辞書を引いてだいたいの意味はわかりますが、会話はいっさいできません。しかし、それは必要ないのですから、やらなくてよいのです。
英語だって、話すことを捨てて、ネットで情報が検索できるという「読むこと」のみに特化した英語力というものがあったっていいのです。

この「翻訳者養成型」教育は、本来、エリートのためのものです。
原書ががんがん読めていかないといけないのです。
ところが、このエリート型教育が全国民に対して行われてしまったために、実際にこの教育の目的である「本がなんとか読める」という水準に達する人は、5%もいないという状況です。
読めるようにならなければ、やってる意味はありません。中途半端にやってもしかたないのです。
それならいっそ、本や論文を読むことはあきらめて、ごく簡単な身の回りのことを最低限言える、という目標に切り替えればいいのでしょうが、そういうわけにもいかない、ということです。つまり高校卒業までにいまの中学レベルまで、読めるだけでなくて言えるようにするという目標を立てればかなりの人が英語を多少は話すことができるようになりますが、エリート養成ができなくなるので文科省は困るのです。それというのも結局は、「全国民に対して同一の到達目標を定める」という基本方針をやめられないからです。ですが、その方針があるままだと、結局エリート養成も、一般の人が最低限の英語ができるというのも、どっちも中途半端になってしまいます。

またもう一つは、大学に対してはやたら厳しくなってますが、「中等教育における質の保証」というコンセプトがこの国の教育政策にはあまりありません。
なぜ英語がまったく中学一年程度もできないのに大学に入る人がいるのか、といったら、それはそういう人を高校を卒業させるからですし、原級留置もないわけですね。落ちこぼれを絶対作ってはいけないのか(現実は落ちこぼれているがそれがいないという建前を守る)、落ちこぼれが多少出るのは当然だと考えるのか、という問題でもあります。

さらに言えば、本当に全国民に英語は必要なのか、ということです。現実には、必要ではありません。必要なのは、エリート層です。教育政策としては、本音としてはエリート層の質を確保したいのだが、他の人はやらなくていい、というのは「到達目標については平等にする」という建前に反するのでそれは言えないわけです。ですから、英語なんてあいさつとかトイレはどこかくらい言えればいいような人までエリート層と同じ目標が設定されてしまっている。こういう矛盾があるんですね。

まあ、そういう問題がありますが、ともかくも、今のエリート層は英語が読めるだけではだめで、オールラウンドでなきゃいけないということはみな気づいていて、いろいろやろうとしますが、全員に対してやらねばならない建前なので(まあ、セルハイというものはありますが)、それだけ予算は確保できない、という現状です。教員養成も変えないといけませんが、こっちは大学の「自主性」に大幅に任せてしまっているのでなかなかすぐにはいきません。

教育政策の批判はこのくらいにして、それでは、この「翻訳者養成型」の教育を受けてしまった人が、そこから「オールラウンド型」に軌道修正していくか、という道を考えてみることにしましょう。

この教育法のネガティブな面は(もちろんポジティブな面がないわけではありませんが)

1.英語を日本語に直して理解する癖がついてしまっていることがある。
2.文字と音声が一致しないので、読んでわかってもまったく聞き取れない。
3.英語の音声的な特徴についての基礎知識を教わっていない。

この3つがあります。
ですのでここをケアする学習法を入れれば、今までの知識を、オールラウンド型に切り替えていくことができるでしょう。
ただし、基本的な文法や単語があやふやな人はそれだけではだめなので、別のやり方が必要です。

ケアするのは簡単で、一つはずばり「多読」です。やさしいものの多読ですね、特に。
第二点は、「意味のわかった英文の読み上げ音声を徹底して聞く」です。
第三点は、「英語の音声面についての基礎知識を一回ちゃんと勉強しておく」です。

第一点については、多読のガイドブックはいま多数出ていますから、それを参照してください。ただ、「辞書は絶対に引かない」はあまりこだわらなくてもいいだろう、と個人的には思います。これは、「訳読病患者」の重症の人のためのアドバイスで、知らない単語があるとまったく先に進めないという人のために、わざとそういう言い方をしていると思ったらいいです。ほとほどに、たまに辞書を引くのはいっこうにかまいません。とにかく、「日本語に訳さずに英語だけが頭の中を流れている」という状態を長く持続して経験するために、引かない方が効果的なのだ、という意味です。知らない単語はチェックだけしておいてあとでまとめて調べたりするのは問題ありません。

第二点は、自分のレベルにあったものなら何でも、音源つきのテキストを買って聞けばいいだけです。いま、ほとんどの教材はCDがついているが音声ダウンロードができますね。学校の教科書だけCDがついていないのは世界七不思議の一つだと思っています。
なおこういう教材は、和訳や解説がついていることが多いです。最初から和訳を見てもいっこうにかまいません。
ある程度までやったら(80%くらい)次の教材に行くとよいです。というのはこういう本をやりながら語彙を増やしていくのがよいからです。新しい語彙も耳からも覚えることができますね。
「読める」のと「聞ける」のレベルと一致させていくことです。この作業は、日本の英語教育の最大の欠点を補うものなのでとても重要です。
英語字幕付で英語のドラマを見る、というやり方もよろしいと思います。

第三点は、これも最近そういう本が出ていますので一冊やればよいです。現在の私のおすすめは、野中泉『脱カタカナ英語の処方箋』です。
そういう基礎知識を得た後、上の音源つき教材を音読するとか、シャドーイングするとかの練習を入れればよいでしょう。

なお、会話の練習もしたいという人は、料金の高い英会話スクールではなく、安いオンライン英会話で十分です。ある程度量をこなすのが大事なので、高いと続きません。


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プロフィール

SH

Author:SH
東京大学大学院総合文化研究科出身。現在、地方の公立大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみました。フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。現在は中国語とロシア語を学習中で、自分の外国語学習理論による多言語習得をめざしています。ハングル能力検定3級合格。

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