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ちょっと放言ですが

2012.04.01.01:14

English Journal 4月号に出ている佐藤良明氏の「英語ができない病」。
連載になるようですが、なかなか痛快ですなあ。

「意志と自然の対立を乗り越えよう」と言っています。
これは、無意識的なインプットと意識的な学習はどちらか一方ではいけないということで、第二言語習得研究を知ってる人には常識ですが・・

ここで、日本の英語教育界を斬る中で、早期教育への熱を批判していますが、勢い余ってこんなことを書いてしまっています。

でも中学校だって、十分「早期」とはいえないだろうか。これを言うのは、ちょっと勇気が要るけれど――信頼できる教師を確保できぬまま進んでしまった中学校の英語教育が、その後、いくら練習してもなかなか英語が身に付かなくなる悪癖を日本人に植え付ける、全国民を巻き込んだ“逆教育”の場になっているという現実はないだろうか。


Oh my God! 言ってしまいましたよ。
でも、そう考えているのは私だけじゃないんですね。
前にも言ったけど、私の考えも、「人に教えるなら最低TOEIC900点」です。
TOEIC900点で採用試験の筆記免除なんかやってるのがおかしい。900点で足切りするのが本来なの。
でもそれだと人材確保できないから、基準を下げてます。
本当は、日本は、「全国民に質のいい英語教育をする」というだけの国力はない国なんでしょ? それははっきり認めなさいよ、ということですね。
無理しないで、英語は一部の人だけに絞ってやったほうが国益になると思うんですがね。
予算が少ないくせに平等主義でやろうとするから無理がある、ということですね・・

英語力の最低ラインというだけでなく、教えるための専門的スキルをどれだけ鍛えているのか?
英語教員の免許を取るのに、日英比較音声学、発音指導実技、第二言語習得理論、日本語文法の基礎知識(国文法ではなく)などという科目も必修ではないわけですよね?
免許を取るのを今より20倍くらい難しくせえ。そのかわり勉強して免許取った人は就職しやすくなる。いいと思うんですがね、その方が。

佐藤氏はネイティブ信仰のことも言っているが、ネイティブといっても英語教師として信頼できるのは、英語教授法をしっかり学んだことのある人です。そういう専門知識のない「ただのネイティブ」はモデルや練習相手にはなりますが、教えるプロではないですよね。
そういう人はなかなかいませんよ。というのは、ネイティブで英語教授法の修士を持っていれば大学に就職できます。街の語学学校などで働いてはいないんですね。

佐藤氏の文章の意図は、「英語教育におけるプロのコーチングが不足している」ということらしい。英語教育をいろいろ言う割にコーチングのプロがいないし、それを養成するしくみもないのは事実ですね。ま、今後、どう展開しますか。

英語の音声システムについての基礎知識と技能

2012.03.24.00:45

私は静先生の影響もあって発音練習、といいますか正確には「英語の音声システムについての基礎知識と技能」を身につけることをすすめているわけですが、

その理由は、

1.重要であるにもかかわらず、学校ではまじめに教えられていない状況がある。
2.それほど身につける項目が多いわけではなく、少しやればリターンが大きい学習である。

ということがあります。
静先生のブログとか見るとよく書いてありますが、とにかく学校の英語の先生で、発音が下手な人が多すぎるという状況があります(「ありました」と書きたいところですがそうでもないらしい)。
これは前にも書きましたが、英語の教員の需要数に対して必要な英語力を身につけている人材が集められていない状況があるので、本来人に教えるレベルじゃない人も教員になってしまっているらしいです。
たぶん、学校では、英語力よりも生徒指導力の方が重視されているのかもしれません。
「生徒がいい発音をするとクラスの中で浮く」などという現象は、英語の教師の発音がよくてみなが「かっこいい」と思っている限り決して発生しないことです。

また、生徒に英語を「聞かせる」のも量が少なすぎますし、とにかく、音声面の指導が少なすぎです。それを象徴するのが、「教科書にCDがついてない」ということです。今時英語の学習書でCDがついてないものを探すのも大変ですよね。

しかし発音というのはフィジカル・トレーニングですから、やればやっただけすぐに上達していくのです。つまり見返りの多い学習です。
これに対して、文法をとってみると、やればやっただけ上達するわけではないのです。
え?そうなんですか? という声も聞こえてきそうですが、第二言語習得研究によれば、文法の問題をいっしょうけんめい解いたからといって文法ができるようになるとは必ずしも言えないのです。文法に関しては決して「積み上げ」ではないのです。そういう、数学みたいな勉強のしかたが英文法でもできると考えるのはまったく誤りです。
そういう勉強を塾なんかでも教えてますが、それはもう古い学習理論に基づいた正しくない勉強法です。
いや、文法をやらなくていいわけではないんですが、文法問題を解くことによっては文法は身につかないといっています。今それは主題ではないのでおいておきまして、

話を戻しますが、発音に関しては、極端な意見が見られます。

1.いくらやってもネイティブのような発音になるわけではない。
2.だから発音に関しては日本人流でいいんだ。

こういう単純な論法があるのですが、よく考えてみると

1.いくらやってもネイティブのように文法がわかるようにはならない。
2.だから文法はやらなくてもいいんだ。

こういう論理構造と同じわけで、飛躍しているのがわかりますね。

発音練習の目的は、ネイティブ並みになることではなく、「国際的に通じる、ノンネイティブとしての標準レベル」なのです。
そして、発音というのはただ個々の音が標準に近く発音できるということだけではなく、「英語の音声システムの基本的特徴」についての基礎知識を学ぶ、ということでもあります。
それは基本文法と同じように重要なことなのです。

たとえば私が前のレビューであげたような項目、「弱形、帯気音、フラップT、リエゾン、鼻腔開放」など、何のことを言っているのかさっぱりわからない人もいるかもしれません。
しかしそれは、いってみれば、現在完了とは何とか、分詞構文は何っていう話と同じレベルなんですよ。自由に使いこなせるというわけではなくても、知識として知っておくべきことなのですね。
つまり、音声面に対する基礎知識というものがあって、それを知るべきなのだという意識が低いのです。この責任は、それを教えてない中学高校の英語教育にあるのですが。

それはそんなにたいへんなことであるわけではなく、『絶対発音力』や『英語舌のつくり方』を通読すれば身につくようなことなのですから、そんなに時間がかかるものではなく、知ったとすればたいへんにリターンの大きいものになるのです。英語の音が「なぜこのように発音しているのか」がとてもクリアに理解されてきます。というわけで、そういう分野への投資をおすすめするわけです。

英語は実技科目ですからね。正しいセオリーを知り、そして実際にやるだけです。
何が正しいのかを知らなければ努力もしようがありません。知ることから始まるわけです。

ゼロからスタート英語発音猛特訓

2012.03.24.00:16

発音本のレビュー。
2011年2月発行の、『ゼロからスタート英語発音猛特訓』(関口敏行著、Jリサーチ出版)。

まずこの本の特徴は、どうしても必要な重要な子音・母音にフォーカスし、あとのものは多少不正確でも通じるレベルならいい、という割り切りをしていることです。
r,l,f,v,thなどの音にはとても詳しく、やり方が図解されています。

その部分は見るに値するものですが、基本的には「割り切り」をコンセプトに作られていることを承知しておきましょう。「日本語の○○でOK!」がとても多いです。つまり日本語と同じ音でなんとか通じるものはそれ以上に追求せず、日本人ができない音にフォーカスするということです。

この本でも「r」の練習は、「ウ」とすぼめるところからスタートします。
実際、「r」は、舌の反りよりも、とにかく口をすぼめることを徹底してやった方がそれらしい音が出やすいことは経験上言えることです。

ゼロからスタート英語発音猛特訓 (ゼロからシリーズ)ゼロからスタート英語発音猛特訓 (ゼロからシリーズ)
(2011/01/20)
関口 敏行

商品詳細を見る

NHKのやりなおし英語講座

2012.03.23.16:27

今度のNHKでは、いろいろと「やり直し英語」の講座が開講されるようです。

NHK高校講座

チョー基礎から始めよう! ベーシック英語

中学校の3年間で学習する英語の内容を
基礎の基礎から学べる高校講座

「やり直し英語」っていうのも需要があるものだと思うのですが、なかなかこれといった教材がないですね。私は調べてみたことがあるのですが、ほかの外国語にあるような「英語入門書」という本がほとんどないのです。

後これは、もう少しカジュアルな印象。

おとなの基礎英語
ちょっとした会話くらい楽しみたいと
「英語に対する憧れ」を抱く人向けの語学番組


発音学習書三種の比較

2012.03.23.14:06

発音の本ですが、もう一ついいものに、野中泉『英語舌のつくり方』があります。
英語耳とか英語喉は、学問的には「?」もあるような本ですが、この英語舌はかなりまっとうなもので、いいのではないかと思います。
リエゾン、リズムのことまで、英語の音声面についての必要知識がコンパクトにまとまっているという点では『絶対発音力』と遜色ありません。むしろよりコンパクトでわかりやすい面もあります。

「フラップt」がしっかりのっていること、またtnの鼻腔解放まで触れています。
また、r音色のある ɚ には触れていません。それと、ʌ の音を、ə の強形として説明しています。それでアに似た母音は三つだとするのです。
たしかにʌ ə の二つは長音位置が近いので、実用上は同じ音の強弱とみても差し支えないようです。ただ、そういう説明をすると、ʌ もある程度脱力して発音するという言い方になるでしょう。

靜『絶対発音力』、野中『英語舌』、黒川『英語発音の筋トレ』を比較してみました。


          靜  野中  黒川
early, errの母音  ə   ə   ɚ
ə と ʌ    別  同一視  別(注で同一視可能と説明)
 ɚの説明  ×   ×   ○
リズム・リエゾン  ○   ○   ×
弱形        ○   ○   ×
フラップt      △   ○   ×
鼻腔解放      ×   ○   ×
側面解放      ×   ×   ×
帯気音       ○   ○   △
ʃ ʒ ʧ ʤ 区別  △  ×  ○
スペリングの対応  ○   ×   ×
息の量       ×   ○   ×
喉の通り      ×   ×   ○

思いつくまま列挙してみましたが、本によって結構違うことがわかると思います。
特に『筋トレ』は、単音に特化しているだけでなく、 ɚを意図的に使って練習をしていますので、その特徴を理解しておくといいでしょう。
逆に、アメリカ発音の ɚ はむずかしいので省き、イギリス式で代用するという発想もそれなりに合理的ですね。発音学習書を選ぶときは特にこの音がどう扱われているか注目するといいです。

で、音声知識の全体を知る上で靜・野中は甲乙つけがたいと思いますが、靜本はとにかく練習が豊富、野中本はコンパクトさがあり説明がわかりやすいです。可能ならば両方買って、どちらかをメインにしてもう一方を参照するのがおすすめです。

なおここで、野中本へのちょっとしたツッコミをしておきます(靜本については前にずいぶんツッコミましたので)。
米英どちらに統一した方がいいと言いつつ、 ɚ のことが出てないのはおかしいのでは?
ウの長短で、短い方がやさしいと言っているが、日本人にはむしろ強く唇を突き出す長いウの方がむずかしいのでは?
ar, or の扱いが簡単すぎる。
あとやはりスペリングとの対応は簡単に触れてほしい。多くの学習者は、語末の silent e のことも習っていないことが多いので。


追記: 今回の教科書は、『英語舌』にしてみました。『絶対発音力』もいいけど、二年つづけてそれを使ってるので、ちょっと違うことをしてみたくなったのと、どうしても文章の量が多くて教室では使いにくいところがあると思ったのです。独習にはいいんですが。
『筋トレ』は、やはり、単音しか扱ってないので、その他のことについてべつに教材作らないといけなくなりますね。それと、上に述べた方針なので、father / farther を必ず区別しないといけなくなるわけですが、それはどっちでもいいじゃん!(オプショナルである)という立場もあると思うので、この本を使うとどうしても必ずこの区別ができないといけなくなるので、その点が制約されるように感じました。
プロフィール

Author:菅原 浩
東京大学大学院総合文化研究科博士課程で比較文化論を専攻。現在、長岡造形大学教授。第二言語習得研究・音声学等の知識をもとに25年以上にわたり英語教育に携わる。
TOEIC990点。
英語のほかいろいろな言語をやってみましたが、現在は韓国語を独学中。
フランス語・ドイツ語・中国語も本を読むことはできます。

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